「親の決めた相手と婚約して、お前と会わなくなって……。

愛与といたかったけど、親には逆らえない
だから、卒業して、結婚した」


「どれだけ、愛与が傷ついたか。
分かってんのかよ」


「一方的にでも、突き放さないと別れられないと思ったから。

自分勝手に愛与を振り回してふったんだ。
一番分かってるよ、自分が……」



とてもとても苦しそうな顔をしていた。



「でも、卒業して半年で瑠佳が産まれた。
その時、思ったんだ。

こいつは、俺みたいになって欲しくない。
自由に育ててやりたいって――」



眠る瑠佳を見ながら、優しいまなざしを向ける命。

それから、俺達の方を向き直すと、辛そうな顔をして、また、語りだした。



「それから、二年が月日が流れた
その時、嫁が事故死した。

現場は、悲惨だったらしい
車は大破し、炎上。

最初は、身元不明で、特定には時間がかかった見たいで、警察が丸二日かけて、調べた結果。

微かに燃え残った歯の一部の治療痕から、
俺の嫁だと推測したらしい。

それで、三日間滞在予定のホテルにも友達にも確認したが、何処にも居なかった。

信じられなかった……。
でも、現実で、どんどん進んでいって、
一通りの始末はした。


一区切りついて。
流石に一人で子供を育てるのは大変だからって、実家に呼び戻された。

ありがたかったけど、親は、瑠佳をエリートにするつもりで育て始めた。

俺が一番疑問に思っていたことだ。

将来のために勉強する。
もちろん、大切なことだけど、将来の為って言って、遊ぶ時間も友達といる時間も無かった。

貴方のため、将来のため。
いつもそれが親の口癖だった。

いつの間にか、友達も恋人も上司も部下も親に全部決められてた。

こんなのは、幸せ何かじゃない。


そう思って、初めて親に逆らって、瑠佳と二人で暮らすことを決めた。

職に就いていた父親の会社を止めて、
誘われた先輩の店でホストとして働き始めた」


「ホスト――。
どうりで、酒とタバコと女の香水の臭いがすると思った」



全部、春毘が嫌う臭い。