今、あたし奏になってるの……?


鏡の前で前髪をかきあげれば、鏡の中の奏も同じように動く。


腰までのロングヘアーを引っ張ってみると痛みが走った。


なにもかもが本物だ。


あたしは鏡の前に立ったまましばらくの間動く事が出来なかった。


あたしは今奏になっている。


いや、あたしの心だけが奏になっている?


よくわからないけれど、とにかくあたしは今あたしではなくなっているようだ。


呆然と立ち尽くしていても目が覚める気配がなく、これは現実なんだと理解して来る。


理解して来るうちに体中から妙な汗が噴き出して来た。


どうしよう?


どうすればいい?


なんでこんな事になってるの?


いっその事、自分自身が死んで奏に乗り移ったということなら納得ができた。


あたしがイジメっ子たちを憎んでいた事は事実だし、呪い殺す事ができれば本望だ。


だけど、どうやらそんな事とは少し違うようだ。


体は完全に奏のものだけれど、髪を引っ張った時に痛みがあった。


朝起きた時に動機も感じた。


と言う事は、呪い殺すにしても自分自身にその痛みや苦しみが襲ってくるということだ。


こんな状態じゃ奏を殺すことなんてできっこない。