「そうなのか? 俺はただ、親にありがとうって伝えてほしいって言われただけだけどなぁ」


あたしがそう言うと、天真は箸を止めてジッとあたしの顔を見た。


「それってさ、またお前の親がなにか解決したってことか?」


小声になってそう聞かれて、あたしは首を傾げた。


「解決……?」


「あぁ。1年の時にあっただろ不登校事件」


そう言われてあたしは記憶を巡らせた。


だけど不登校事件なんて聞いたこともなくて首をかしげる。


すると天真は呆れたような表情を浮かべた。


「お前、忘れたのかよ。1年1組で不登校になった女子生徒がいるだろ。名前忘れたけどさぁ」


「そんな事、あったっけ?」


「お前って結構呑気だよなぁ。あの生徒、自宅で何度も自殺未遂してたらしいじゃん?」


天真の言葉にキュッと喉が詰まる感覚がした。


まるで自分の事を言われたような気分だった。


1年1組のクラスでそんなことがあったなんて、本当に知らなかった。


「生徒の両親は学校でイジメがあったって言って、問題にする気だったんだ。それを穏便におさめたのがお前の親ってわけ」


「へぇ……」


あたしは驚きすぎてろくな返事もできなかった。