あたしは暗い暗いトンネルの中を歩いていた。


さっきまで明るい部屋にいたハズなんだけど、手首を切って気が付けばトンネルの中を歩いていた。


足元だけはうっすらと光が差しているのだけれど、前も後ろも真っ暗で、自分の足音だけが反響している。


出口は見えないし、入って来たはずの入り口も見えなかった。


心細さを感じながら歩いていると、トンネルの壁にオレンジ色の明かりが差し込んだ。


どこからともなく現れた光の中には、穂月の姿があった。


穂月は自室のベッドで目を開けて、自分の左手首から微かに血が流れているのを見て首をかしげている。


よかった。


穂月はあの後すぐに目を覚ましたようだ。


傷口は浅いから、絆創膏で隠せると思う。


映像を見てから歩いて行くと、今度は青色の光が見えた。


光の中には灰色の壁に囲まれた部屋が見えた。


一見寒々しいその部屋には司がいた。


司は同室の少年たちと一緒に布団を片付けている。


その表情は学校にいたころよりも明るかった。


更に歩いて行くと、今度は赤色の光が見えて来た。


その光の中には夏斗の姿が浮かんでいた。


夏斗は自室でスマホを手にして、あたしが作ったストラップを愛しそうに撫でている。


なんだか少し照れくさくなって、早足で通り過ぎた。


次の光はピンク色だった。


その中にはユメノがいた。


自宅でアイドルのライブDVDを見ながら熱心にダンスの練習をしている。


汗が光るその顔は、好きで好きで仕方のないものを必死で見つめていた。