夏斗だけじゃない。


奏とユメノも、自分のストレスのはけ口としてあたしをイジメていたことを、今ではすごく後悔していた。


「穂月がなにか悩みを抱えていなかったか、みんな知らない?」


残るは穂月だけなんだ。


穂月の心がきれいに晴れれば、それで問題はすべて解決するんじゃないかと思っている。


「穂月の家庭は少し複雑なんだよ」


そう言ったのは奏だった。


奏はユメノの事情も知っていたし、仲間を大切にしているのが伺えた。


「複雑?」


「そう。穂月は施設の前に捨てられていた子なんだよ」


その言葉にあたしは目を見開いた。


穂月が捨て子だなんて考えたこともなかった。


「本物の両親の顔は見たことがないって言ってた。でも、穂月が小学校低学年の頃里親に引き取られて、幸せな生活をしてたんだよ」


「そうだったんだ……」


あたしは胸の奥が苦しくなるのを覚えた。


両親の顔を知らずに育つなんて、あたしには想像もできない世界だ。


「でも、幸せに暮らしてたんだろ?」


夏斗がそう言った。