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「イジメなんかやめよう」


人気のない階段で夏斗がそう言った。


やっぱり、そういう話だと思っていた。


もちろんその考えには大賛成だった。


奇妙な経験を繰り返すうちに、みんなの苦労を見ることになった。


そしてそれを少しでもなくすことができれば、イジメはなくなると信じて来たのだから。


だけど……穂月がイジメをしてしまう理由がまだわかっていなかった。


穂月の心にも重たいなにかがあるのだとすれば、それを取りのぞいてあげないといけない。


そうしないと、イジメは完全にはなくならないと思うんだ。


「司はいなくなった。今の内なんだ」


何も言わないあたしに夏斗が言った。


必死で説得しようとしている夏斗に心の奥が暖かくなるのを感じる。


夏斗はずっとあたしのことを守ってくれていたんだ。


今みたいに必死になって。


「……ありがとう夏斗」


あたしは思わずそう言っていた。


夏斗は「は?」と、首をかしげている。


あたしはユメノと奏を見た。


2人とも、あたしをイジメていた頃に比べるとすごくスッキリした顔をしている。


人生の重荷を取り払う事ができた、爽やかな表情だ。