「だけど、司や穂月に逆らう事はできないよね」


そう言われると胸が痛かった。


あの2人はどこまでも卑怯だ。


浩志と天真が抜けたことで今は余計に気が立っている。


そんな中、イジメに加担することをやめればどうなるかわからない。


「俺、思うんだけどさ……」


「なに?」


「穂月と司にも、誰かをイジメる理由があるんじゃないか?」


あたしの言葉に奏はビックリしたように目を見開いた。


「あの2人に?」


「そう。もちろん、なにもないのに人を傷つける人間はいる。だけど、当人じゃないとわからないことだって沢山あるだろ?」


あたしはこの奇妙な出来事のおかげでそれを知る事ができた。


イジメっ子たちの苦痛を経験することができた。


「それはそうかもしれないけど……」


奏は納得できない様子で首をかしげる。


「奏は、あの2人についてなにか知ってる?」


「傷ついたり、ストレスを抱えることがあるかってことだよね? なにも聞いたことないけど……」


「そっか。だけどあの2人からすれば弱味を見せる事はプライドを傷つけられる事に値するかもしれないよな。いつでも人の上に立って笑ってたいんだからさ」