「見ての通り、あたしの怪我は頬だけよ。トラックが迫って来たから驚いてこけて擦りむいたらしいんだけど、全然覚えてないの。この土日の記憶がないんだよ」


「へぇ……？　よくわからない事もあるもんだね。でも、怪我が大したことなくてよかった」


あたしはそう言い、ほほ笑んだのだった。


それから少しすると司と穂月が教室に入って来た。


２人の威圧感に教室内は一気に静かになる。


浩志と天真が意識的に２人から視線を外したのがわかった。


まだ怯えの表情を浮かべているけれど、もう自分たちは仲間じゃないという強い意思も感じられた。


２人が抜けたせいか、司と穂月の機嫌は悪かった。


椅子に座る時もわざとらしく大きな音を立てて座り、大げさなため息を吐き出す。


その行動だけで教室の中の空気は張りつめていくのがわかった。


浩志と天真はグループを抜けた。


奏もイジメを続ける理由がなくなった。


そしてユメノも、もうストレスを感じなくてもよくなった。


すべて順調なはずなのに……あたしの胸には嫌な予感が渦巻いていたのだった。