あたしは、あたしをイジメている時の奏しか知らない。


ユメノたちとどんな会話をするのが自然なのかわからなかった。


それでもどうにか会話を続けていると、教室の戸が開く音しがして振り向いた。


そこに立っていたのは穂月と山上司(ヤマカミ ツカサ)だった。


2人が入って来た瞬間、教室内から私語が消える。


ユメノですら、自然と言葉を消していった。


「おはよう」


穂月の一言にあちこちから「おはよう!」と、挨拶が聞こえて来る。


「おはよう、穂月!」


ユメノが穂月に駆け寄るので、あたしも慌ててその後に続いた。


「おはよう2人とも」


穂月が笑顔を向ける。


あたしは思わず顔をそらしてしまった。


穂月のせいであたしは昨日自殺をしたんだ。


穂月へ向けて笑顔なんて作れるワケもなかった。


「どうしたの、奏」


少しの変化に気が付いた穂月がそう聞いて来た。


その声に反射的に身を固くしてしまうあたし。