「ほら、熱もないし」


ユメノのお母さんはおでこから手を離し、怒った表情で腕組みをした。


「で、でも、本当に体調が悪くて……」


「どこがどう悪いの?」


「それは……」


具体的に聞かれると返事ができない。


本当はどこも悪くないのだから当たり前だ。


「仮病を使う時はちゃんと考えてからにしなさいね。早く支度して、出てらっしゃい」


そう言うと、ユメノのお母さんは足音を響かせて部屋を出て行ったのだった。