ユメノのお母さんだろうか。


声の雰囲気からして年上のようだった。


あたしはすぐにベッドにもぐりこんだ。


「今日は体調が悪いから休ませて」


せき込みながら、弱弱しい声を出してみて驚いた。


想像以上に上手な演技ができたからだ。


あたしもイジメに会うのが嫌で何度も仮病を使ってきたけれど、両親にはすぐに見抜かれてしまっていた。


だけど今のセリフは本当にリアルに再現できた。


これはあたしの力じゃない。


ユメノがレッスンを積んできた成果だった。


それがユメノの体に染みついているのだ。


「嘘言ってもすぐにバレるのよ?」


ノックもなしにそう言いながらドアが開かれた。


ギクリをしてキツク目を閉じる。


「母親を騙そうなんて百年早いのよ」


そう言い、あたしのオデコに冷たい手がのせられた。


そのヒヤリとした感覚に思わず目を開けた。


そこにはあたしを見おろしている綺麗な女性がいた。


色白で細身。


大きな目に茶色の髪の毛はカールがかかっている。


ユメノのお姉さん?


一瞬そう勘違いしてしまうくらい、若くて綺麗なお母さんだ。