穂月はあたしたちに視線を向け、奏のところで視線を止めた。


「奏は?」


「あたしは……別に……」


もうイジメをする理由を持っていない奏はおずおずと返事をする。


しかし、しっかりと断る勇気はなさそうだ。


「お金、とるんでしょ?」


穂月が笑顔で聞いている。


奏は口を結んで押し黙ってしまった。


司が1つ欠伸をしてポケットの中から煙草を取り出した。


ライターで火を付けて一服している。


先端の赤い火を見た瞬間、左腕に痛みが走った気がした。


もちろんあたしの気のせいだ。


あたしはグッと左腕を押さえて痛みの感覚を頭から振り払った。


イジメ開始の合図はいつも司が持っていた。


タバコに火をつけた時から穂月は楽しげな表情で司を見ている。