結局、昼間の話し合いではなにも決める事はできなかった。


昨日までイジメに加担していたメンバーがイジメをやめさせる側に回ると言うのは、想像よりも難しいのかもしれない。


今まで見てきたようなイジメの被害者側に回るかもしれないのだ。


そう考えると、どうにも話は進まなかった。


だけど奏の気持ちに変化はあったんだ。


これは大きな一歩だ。


昼を食べ終えて教室に戻って来たあたしは、ユメノの行動を観察していた。


ユメノは休憩時間別のグループに属している。


少し派手で、芸能界に興味の強い女子グループ。


しかし穂月と司がイジメを開始すると、率先してその輪の中に入って行く。


あたしを蹴ったり殴ったりしている時のユメノはいつも笑顔だった。


おもしろい遊びを思いついた子供みたいにとても無邪気なのだ。


だからこそ、恐ろしかった。


ユメノは自分がやっていることが悪い事だという認識をしていないのかもしれなかった。


もしそうだとしたら、真っ向からイジメをやめろと言っても無駄に違いない。


何が悪いのか理解していないのだから。


ユメノは誰かをイジメていないと壊れてしまう。


奏のあの言葉は、どういう意味なんだろう……。