それから数日は何事もなく香織の病院での日々が過ぎて行った。その間も麻衣や優里奈は度々、香織の病室を訪れていたが、道原が来ることはなかった。

もう冬の入口に入っていたその日、朝から空は晴れ渡っていた。
穏やかな日の光に中庭も、そこにある遊歩道の石畳もキラキラと照らされていたが、街路樹は全ての葉を落としてしまい、寒そうに細い枝をさらしている。

香織の病室では

「カオリサン…」

「ほら!かわいい!このほうが絶対いいよ!」

P15は人型ロボットとは言え、ほとんど「のっぺらぼう」に近い顔だった。
赤外線探知器とモニターカメラの2つが目のように対になって付けられているため、それが顔のように見えるのだが、そこへ香織はマジックペンで眉毛と口を書いた。

「ケシテクダサイ…」

「いやよ!」

「ワタシハ・ココノ・ビヒンデス」

「だから何よ!」

「ダイジニ・ツカッテクダサイ」

「えー?このほうが可愛いんだけどな」

「………」

「わかったわよ!消してあげる」

渋々、P15の顔を香織がゴシゴシと拭いていると、病室の扉が誰かにノックされた。