「わぁ!赤とんぼだ!」

木製ベンチ脇にある白くぬられた金属製ポールの先に止まるそれを見つけた森村香織は思わず大きな声を出した。
鮮やかに色づいていた葉が落ち始め、少し寂しくなった街路樹の枝を風が揺らす。
夏が苦手な香織にとって好きな季節になった。

暑いのは嫌だし、汗かくのも好きじゃない。
それと比べれば寒いのは大丈夫。それに冬の景色が好きだった。

冷たく感じる空気は澄んでいて、遠くに見える山も、街も輪郭がはっきりする。
それに雪は綺麗だ。それは静かで美しく、神々しいまでに神聖な世界を見せてくれる。


しかも…