……何それずるい。形勢逆転。柊くん有利。


かわいいって言っちゃダメなら待っててあげない発言した私が、待っててくれなきゃ乗せてあげない発言をされたようなものだ。


「なんか悔しい」


バッグの紐を両肩にかけながら荷台に近寄ると、


「あれ、もう終わり?」


柊くんは再び私の形勢逆転を危惧していたかのように言う。乗せてくれないなら、って一応考えてはみたけれど。言うのはやめた。


「だって乗りたいもん」


荷台へまたがる。サドルは私の腰よりわずかに高い位置で、柊くんが座るのを待っている。


ちょっとどきどき。ウソ。かなりどきどきしてる。


「ひまりは素直だよね」

「……それは柊くんのほうだ、と、」


まだ座らない柊くんを見上げれば、目と鼻の先に端正な顔が迫っていた。


「う、ひゃあ!?」


びっくりして思い切り仰け反ったら、荷台から落ちそうになった。


ぐん、と腕が引っ張られて、気付いたときには柊くんの胸の中。なんだこれ。なんだこれ……! 何が起きた!?


「ごっ、ごめ……」


そっと体を起こす。顔が上げられない。どうしてこんなことになったのかもわからないのに、どう対処するのが正解かなんてわかるはずない。


もしかして、本当、もしかして、だけど……。私、キスされそうになっ、た……?


ぶわわ、と顔が赤くなる。