「ひとりで待ってるなんて退屈だったろ?とか。暗くなってきたら危ないじゃん、とか。待ってなくていいのにって感じのこと言ったほうがさ、かっこいいかもだけど……」
自転車のハンドルを掴んでいた柊くんが、左手の甲で顔を隠した。
「嬉しすぎてやばい。引くよな、ごめん」
……やばい、とは。その隠しきれてない、赤くなった顔のことでしょうか。
「でも、また、待っててくれると……や、できればでいいんだけど……あー……何言ってんだ俺は」
柊くん小劇場。告白してきたときも、こんな感じだった。すらすら言葉が出てこなくて、それが恥ずかしいのか余計にどもっちゃってて。私にも緊張が移って、しばらくお互い無言だったよね。
「柊くん、かわいい」
「……何それ。嬉しくないよ」
「じゃあもう待っててあげない」
うはあ爆弾発言。私のくせに上から目線! 調子のった! でも平気! だって柊くんは「えぇー…」って項垂れて、迷ってくれるから。
男子ってかわいいって言われるの、そんなに嬉しくないのかな?
顔を上げた柊くんの頬はまだ、ほんのりピンク色。私の発言に納得はしてないようだけど、ぽん、と自転車の荷台を叩いた。
「次も乗せるから、待っててよ」
次、とは。私がまた部活終わりの柊くんを待っていれば、憧れのふたり乗りがいつでもできちゃう、ということでしょうか。