なんだかバタバタさせちゃったかな。柊くんも『なんだったんだ?』という顔をしている。その横顔を見ながら、きゅっと拳を握る。
「ふっくん、フラれたらしいよ」
「は!? あいつ好きなやついたの!?」
「2時間前から」
「2時っ……ああ、うん、なるほど……」
思い当たる節があったのか、柊くんは先程までの事態を呑み込めたようで。
「ていうかなんでひまりが? すげーびっくりしたんだけどっ」
と、急に私の正面へ向き直ってくれた。その表情からは確かに驚きも感じられたけど、瞳の奥がきらきらして見えた。
私、待っててもよかったんだ……。
びっくりしてくれたなら大成功。でも笑顔まで付けてもらっちゃうと、照れくさくなる。
「この前の、お返し? 柊くんは登校前、待っててくれたから。私が部活終わり待ってたら驚くかなーって」
へへ、と笑って恥ずかしさを誤魔化す。だけど柊くんはなんとも言い難い表情を浮かべ、項垂れた。
「……引くかも」
「えっ!? ご、ごめん! 待ち伏せとかキモかった!?」
「そうじゃなくて! ひまりが俺にだよっ」
私が柊くんに幻滅するかもって? 何がどうなってそんな話になった?
首をひねると柊くんは目を逸らし、「だからさー」ともごもご話し始める。