どっ、どっ、と心臓は痛いくらいなのに、体は強張って逃げ出すこともできなくなった。
いやもう、ここまできたら待つけど……反応が怖すぎる。
柊くんも、私が来る前はこんな感じだったのかな。私が駅から出てきても、おはようって笑顔を見せてくれたし、全く想像つかない……。
この前のお返し、って。帰りを待ってる私を見つけたら、柊くんはどんな反応をするんだろう。
うう……っ考えるだけで冷や汗が……!
「ひまりか?」
人、人、人。地面を黙々となぞっていた私に声をかけてきたのは、
「小鷹くん――と、ふ、ふっくん……?」
柊くんと同じバスケ部のふたりだった。けれどふっくんの様子が明らかにおかしい。なにか憑いてるんじゃないかってくらい生気のない顔色をしてる。もはや悪霊そのものに思える。
「メグ待ちか?」
バレてーら! そりゃそうか! いつも一緒にいるもんね!
クラスメイトでもある小鷹くんは長めの黒髪を掻き上げながら腕時計を見る。
「あと4分ほどで来ると思うぞ」
「そ、そっか。ありがとう。……えと、なんかあったの?」
「ああ、こいつか」
小鷹くんは私の視線を辿り、苦い顔をする。