「なーにー? まさかふてくされてんの? 気になるなら、どうしたのって聞きに行けばいいじゃん」


どうしたの……か。

いちばんに聞くのは他の誰かで、私はいつも最後尾。


「べつにふてくされてはいないけど、」


こういうとき、校内では外野感が強いよなあって思う。ちょっぴり柊くんが遠くなるっていうか。周りも私を意識しているようで、していないときのほうが多い。


私は最初から『高遠陽鞠って誰!?』という騒ぎを経て、やっと存在を認識されるようなモブだから仕方ないんですけれども。


「まあこればっかりは、ひまりがなろうがなるまいが、メグの彼女の宿命だよねー」

「宿命、とは」

「努力しないと一緒に過ごせるはずの時間は削られる一方ってこと」


自身の背後を指差す咲の向こうには、温度も色も違う世界。

これが柊くんの彼女になる大変さ。そこへ飛び込む勇気が、私には……ない。




「だから私はダメなんだ……!!」


緊張しすぎな自分に喝を入れてみたけれど、別段効果があるわけもなく。むしろ、運悪く校門から出てきた生徒に不審がられ、ヒィ消えたい!とうずくまる始末。


ああ、緊張しすぎて口から心臓出そう。こんばんは心臓。


18時17分。ぽつぽつと部活動を終えた生徒が出てくる校門前で、柊くんを待っている。