「咲が知るわけないじゃーん」


なかなかの寝不足顔で相談してみたのに、本日も咲は朝から鏡とにらめっこ。マスカラ何本持ってるんだ。


「てか、ひまりが何してもメグは嬉しいよ。たぶん」

「たぶんて!」

「だって咲は咲でしかないしぃ。だから置き換えて考えてみたよ? 咲が先輩に家まで送ってもらえたら~……やばい超興奮する」


いや私、送るなんて言ってないけど……。

最近、1個上の先輩にご執心な咲はどうすればお近づきになれるかで頭がいっぱいだ。私が絞りに絞ったすべきことなんてすぐ追い出される。めげませんけどね!


「お返しに、朝待ってみるのがいいかなって思ったの」

「咲も先輩のこと待ってみようかなあ。学年違うと滅多に会わないし」

「でもどこで待てばいいの!?って。校門が無難かと思ったけど、すぐ教室だし、まず視線が痛いでしょ!?」

「近くのコンビニで待ち合わせでもいいじゃん。お菓子買ってさ~、一緒に昼ごはん食べる約束してみたり?」

「それも考えたけど休日バージョンも考えたの。試合の応援とか! でもギャラリーが多いらしくてっ」

「あー。咲そこは関係ないわ。先輩、帰宅部だし」

「だから帰りを待ってみるって話だったんだよね!」


――ざわっ、と。教室内が突如ざわめきに包まれる。