「モテ人生を歩んできたやつが? ないない! むしろこの期間も楽しんでるようにしか見えないし! てか不安がってたりしたら、福嗣あたりがブチ切れるわ」
「荒ぶるふっくんはすごい想像つく……」
ひと通り笑った咲は、メイクの出来に満足したのか手鏡をしまい、奮発したという新色のグロスについて熱弁を始めた。
私は上の空で聞きながら、今朝のことを思い返す。
やっぱり咲から見ても、柊くんは不安を感じてる様子じゃないのか。
朝のことといい、何かと積極的だもんなあ……。
でも、何かを起こそうとするときの柊くんから感じるのは、不安じゃなくて緊張だったりする。それがあるのとないのじゃ、きっとすごく印象が変わると思う。
人懐こい柊くんの、ときたま出てくる敬語が好き。
緊張してるのが伝わる。不慣れなことがわかる。私のどこにそんなことをさせる要素があるのか。推し量れないけど、だからこそ応えてみたい。向き合って、知っていきたい。
柊くん自身のこと。柊くんが好きになってくれた、私のこと。ふたりの、未来。
受け身で居続けちゃだめだ。
だからきっと流されて、置いてけぼりをくらっているような気持ちになるんだ。
……じゃあ、私がすべきことは、なんだろう?