「嫌いじゃない人に告られたら悩むでしょ。それなりに興味持ってんだしさあ。ま、ひまりにとっては告ってきた相手が凡人じゃないってのが、悩みの種か」
ちらっと、廊下ではしゃぐ柊くんを盗み見る。
私が答えを出せないままでいるのは、柊くんのせいでもある、のかなあ……。
告白してくれた人が柊くんみたいな人気者じゃなければ、私は知らない人にまで名前を覚えられることはなかったし、呼び出されたり、頭を抱えることばかり、なんてこともなかったはず。
柊くんに好かれて、告白までされて、当然だって誇らしげに思える子だったら、また違ったのかな。
私はいっつも、どきまぎさせられて、ペースを乱されて。まるで柊くんが進行方向を決めている船に揺られて流されているだけみたい。
だまされてるのかもって疑ってるわけでもないのに、考えると疑問符ばかり頭に浮かぶんだ。
柊くんが私を好きになるきっかけは、本人が『しょーもないだろ?』って言うくらいだから、好きの気持ちもしょーもないレベルなんじゃないかって。ということは付き合っても、うまくいかないんじゃ?とか。
ふとした瞬間に、真面目に考え込んでしまう。
「……柊くんはこんなこと考えないだろうなあ」
ぽつりとこぼした言葉を咲は拾ったようで、唐突に笑い出した。