「何、どーした? どうせメグのことだろうけど、聞いてあげなくもないよ」
「……今朝、一緒に登校したんだけど」
「あー。ぴーちくぱーちく取り巻きが騒いでたかも」
うっ……1番知りたくなかった情報!
「メグ、わざわざ待ってたんでしょ? やるわー。で、なんでひまりは落ちてるわけ」
ひとつの机を挟み、横向きに座る咲は睫毛のカール具合を鏡で確認している。
「手を……繋ぎたい、みたいなこと言われたんだけど……繋げなくて」
人の目も気になったし、うしろめたい気持ちもあった。でも何より、そんなことばかり気にして、繋いでみたいって気持ちを無視できた自分に落ち込んでる。
私、どうしたいんだろう……。
返事を保留にしたまま、1週間以上。気まずくなったりすることもなく、柊くんは以前とさほど変わらず接してくれている。
さほど、っていうのは……柊くんの言動が目に見えて好意を表しているから。
きっと私は、反応を見られてる。柊くんは押したり引いたり、試行錯誤してるように見える。
私に、彼女になってほしいから――……とか、もう、もう! 嘘だって思うのに現実だってわかってるからツライ! この矛盾ツライ!
「私がもっと天然で鈍感だったらよかったのに……!」
「そんなひまり、メグは好きにならないと思いま~す。咲だって嫌だし。てかまだ1週間じゃん。ひまりが何を見極めたいかは知らないけど、知るための保留期間じゃないの? メグだって了承してんだしさー、好きなようにすれば?」