――気付いたら、目で追うようになっていた。


相手は校内一、二を争うほどの有名人。恋愛感情じゃなくたって、かっこよければ騒ぐし、笑顔が見れたら得した気分になれるし。見かけたら、声は掛けられない代わりに目で追っちゃう――私はそんな、その他大勢のひとりだった。


同じクラスな分だけ、他の子たちよりも接点はあったんだろうけど……それ以上でも以下でもなかった。


普通に話せるのも、連絡先を知っているのも、クラスメイトだから。私だけが特別なわけじゃなかった。


いつも柊くんを囲う、明るくてかわいい子たちのほうがよっぽど特別に見えていたし、実際たくさんの子が羨んでいた。


だから私は挨拶されたって、ノートを貸したって、メールが届いたって、勘違いしないように、意識しないようにって。


そう思いながらも目で追ってしまって、そしたら目が合う回数が増えていって……。


逸らせばいいのに微笑みかけてくれるようになった柊くんのことを、奇跡のように優しい人だなんて思ってみたり。主役級の人はやっぱり違うなって感心すらしていた、あのころ。


もしかしたら柊くんは私のことが好きなのかもしれない、って考えたことくらいはある。そのたび自意識過剰かよ!って簡単に自惚れる自分に身もだえていた。


だけど、そんな必要なかったんだと知ったのは、ある日の放課後。