「思ってない。こうやって一緒に学校行くの、初めてじゃん」
嬉しそう、だなあ……。
学校まで自転車で10分程度の柊くんとちがって、私はバスと電車を乗り継いで1時間弱かかるから、朝は滅多に会わないよねって話したことはあった。
しょうがないと私が片付けたものを、柊くんは目の前に広げたまま、ずっと考えていてくれたりしたのかな。どうしたら朝、会えるのか。一緒に登校できるのか。
ふたを開けてみたら実はこんなに簡単なことだった。
柊くんを見ていたら、またじわじわと頬が赤くなってしまいそうで、道を指差す。
「行こ、っか」
「ん」と頷いた柊くんだけれど、私が半歩進んでも動かなかった。
「……柊くん?」
なぜか、じっと見つめられている。そのうち唇を結んで、あちらこちらへ視線を向け始めたと思ったら、「あー……」とか「えーと」と言いながら襟足を押さえている。
――…これ、って。見覚えのある様子から反射的に下を向いたとき、視界に手のひらが現れた。
「手を繋ぐのは、なしですか」
心臓が破裂するかと思った。
こういうとき、なんでか敬語になる柊くん。
見なくてもわかる。絶対、顔を赤くしてる。私に告白してくれたときと、同じように。