「お兄ちゃん」
「ん?」
「聞いてほしいことがあるんだけど」
「うん、何?」
「私ね、お兄ちゃんが好きだよ」
「え?」
「お兄ちゃんはもう、私のことなんてどうでもいいかもしれないけど—―」
「好きだよ」
「え・・・」
「俺まだ、カイのこと全然好きだよ」
「お兄ちゃん・・・」
「だからさ。俺からも、カイに話があるんだ」
お兄ちゃんの表情はいつになく真剣で、それが演技でも何でもないことは、誰が見ても分かった。
お兄ちゃんに話があると言われて。
私は一体、何を期待していたんだろう。
付き合うとか、結婚するとか。
もしかしたらそんなことは、初めから望んでいなかったのかもしれない。
—―俺たち、兄妹なんかじゃないんだ。
お兄ちゃんがそう言ったとき、私は複雑な気持ちになった。
私たちが、兄妹じゃない。
だから、結婚できるかもしれない。
お兄ちゃんはきっと、そう言いたかったのだろう。
お兄ちゃんはその事実を知った時、どう思ったんだろう。
嬉しかった?悲しかった?
私は、ただ呆然とその場に立ち尽くすことしかできなかった。