「ただいまー」
「おかえり、カイちゃん」
「あっ、妙子おばさん」
妙子おばさんは私に向かってにこにこと微笑みかけていた。
妙子おばさんはどうやら、お母さんと話があるようだった。
何やら二人で深刻な面持ちで話していたため、私はすぐに何かあったのだと悟った。
しばらくすると、お兄ちゃんが帰ってきた。
それと入れ違いに、妙子おばさんは帰っていった。
私はお兄ちゃんに、今日の電話のことについて訊ねた。
「ああ、あれか。急いでたから、慌てて切ったんだ」
「そっか。・・・明日、何かあるの?」
「サークルの先輩が個展を開くから、もし良かったらと思って」
「ふぅん、そうなの」
お兄ちゃんは昔から、絵が上手かった。
小さい頃からよく絵画展に展示されたり、コンクールで賞を獲ったりしていた。
本人も絵を描くのは好きらしく、大学でも美術サークルに入っているほどだった。
そのサークルの先輩が個展を開く、ということか。