「カイっ」
「あ・・・結衣!!」
私は今日、久々に結衣と会うことになっていた。
先日、佐久間さんとのことがあったばかりで気が重かったけれど、結衣の顔を見るとそんな気持ちはすぐに消えてしまった。
「・・・結衣。お父さんの具合、どう?」
「お陰様で。心配かけちゃってごめんね」
「ううん。私にできることがあれば、何でも言って」
「ありがとう、カイ」
私が頷くと、結衣は柔らかく微笑んだ。
それから少し他愛のない会話をして、私たちは喫茶店に入った。
席に着くとすぐにウェイトレスが来たので、それぞれ適当なものを注文する。
彼女が立ち去るとすぐに、結衣は話を切り出した。
「カイ、お兄さんには告白とかしたの?」
「えっ何で、するわけないじゃん」
「もったいなーい!カイ、お兄さんのこともう好きじゃないの?」
「好きだけど・・・でも、お兄ちゃんだよ?」
「知ってるよ。だけどさ、想いを伝えるって大事なことじゃない?」
どんなに、叶わない恋でも。
どんなに、届かない想いでも。
意味のない気持ちなんて、一つもない。
もしかしたら、何を言ってもだめかもしれない。
でも、それでもいいと思った。
何もしないで後悔しないことのほうが、よっぽど嫌だと思った。
結衣を見ると、彼女は私に優しく微笑みかけてくれていた。
結衣にはどれほど感謝してもしきれない。
すると不意に、私の携帯が鳴った。
非通知着信。
私は結衣に断って、急いで電話に出る。