「・・・え、悠に?そんなの、今さら—―そうかもしれないけど—―分かったわよ。じゃ、切るわね」


母さんがそう言って、どうやら電話は終わったようだった。

そこで俺は、リビングに入る。

母さんは目を丸くして俺のことを見た。


「電話、誰からだったの?」

「妙子おばさんよ」

「ふうん・・・何だって?」

「別に。大したことじゃないわ」

「でも、俺のこと話してなかった?」


俺がそう訊ねると、母さんは言い淀んだ。

それから深く息を吐き、「何を言われても、覚悟はできてる?」と訊ねてきた。

何の事だかさっぱり分からないまま、俺は頷いた。

・・・覚悟って、何だよ。

そんなに重大なこと話してたのかよ。


—―これ。見れば分かるから。


そう言って母さんは、一枚の紙を差し出してきた。

俺はそれをじっと見つめる。

そこに書かれていたことはあまりに予想外の事実で、俺は驚きで声が出なかった。


「ごめんね」


母さんはそう言ったきり、もう何も話さなかった。

俺とカイが出逢ったのは、やっぱり運命だったのかもしれない。

そう思った。