それからすぐには帰ろうという気が起こらず俺は商店街をふらふらと歩いていた。

すると不意に、誰かが声をかけてきた。


「悠くん?」

「えっ」

「やっぱり、悠くんだった。大きくなったのねえ」

「・・・もしかして、妙子おばさん?」

「そうよ。悠くんにはいろいろ話したいことがあるから、またお家へお邪魔するわ」

「あ、はい」


それから妙子おばさんとは二言三言話して別れた。


家に帰ると、玄関には母さんの靴が置いてあった。

今日は珍しく、帰りが早かったらしい。

ただいま、と言おうとして俺は閉口する。

母さんの声が聞こえたからだ。

そしてその声は、はっきりと俺の名前を発していた。

母さんが電話か何かで誰かと俺の話をしているのだろう、俺は無意識のうちに聞き耳を立てていた。