「佐久間さんっ」


—―気が付くと、私は佐久間さんを追いかけていた。


彼は驚いた顔で私を見る。

それから「どうしたの」と私に訊ねた。


「佐久間さん、私・・・」

「うん」

「私、怖いの。もう、どうしたらいいか分かんなくて」

「オレだって、どうすればいいか分かんねーよ?」

「あ・・・ごめんなさい」

「オレ、今すっげー期待したのに。超だせーじゃん」

「そんなことないです、全然」

「ありがとう。でもそんなこと言うのは反則だよ」

「反則?」

「うん、すげーズルい」

「私、そういうつもりじゃ—―」


分かってるよ、と言いながら、佐久間さんは私を抱きしめた。

佐久間さんのことは、大好きだけど。

でもそれは、恋とは違う。

私は彼に対して、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。


「佐久間さん・・・?」

「・・・ごめん、カイちゃん。もうちょっとだけ、このままでいさせて」

「・・・はい」


佐久間さんの肩が、小さく震えていた。

それに気付いて、私は胸が詰まりそうだった。

それからもらい泣きしてしまいそうになるのを、必死に堪える。


「・・・佐久間さん、ありがとう」

「うん」