佐久間さんは、どこまでも優しい人だと思う。
いつだって私が気を遣わないように、彼が気を遣ってくれている。
私、佐久間さんを好きになれば良かったのに。
そんなどうしようもないことを考えながら、私は黙って彼の隣を歩いた。
—―カイちゃん。
佐久間さんはそう言って、不意に私の手を引いた。
私は驚いて、その場で足を止める。
「ねえ、カイちゃん」
「・・・はい」
「オレが何で、カイちゃんに会いに来たか分かる?」
「どうして、ですか?」
「えー、言わせないでよ。オレのメンツ丸潰れじゃん」
そう言って佐久間さんは照れ臭そうに笑って、俯いた。
そしてそれから、あいつは、と続ける。
「・・・あいつは、カイちゃんのお兄さんなんだよ」