「カイのお兄さん、元気?」

「あ・・・うん、元気だよ」

「そっか。それなら良かった」


結衣はそう言うとまた、力なく笑った。

きっと結衣は、自分のつらさを私には悟られまいとしているのだろう。


「ねえ結衣、学校は?」

「あたし、学校辞めたの」

「なんで・・・」

「ママ一人じゃ、大変だからね」

「結衣・・・」

「それにね。あたし、結婚するの」

「え?」

「許婚ってやつ。恋人でもいれば、それも何とかなるかもって思ったんだけどね」

「それで、お兄ちゃんに・・・」

「うん。あ、でもこの話はお兄さんに内緒ね」


もちろん、と私は首を縦に振った。

まさか結衣に、そんな事情があったなんて。

「時間がない」とは、そういう事だったのか。