「なあ、カイ」

「・・・」

「最近、おかしいよ。何かあった?」

「別に。何もないよ」

「嘘だ。だって完全に、俺のこと避けてんじゃん」

「気のせいでしょ」

「違うね。今だって、俺のこと全く見ようとしてないし」

「そんなことないよ」

「じゃあ、こっち見て。俺のこと、ちゃんと見て」


嫌だ、とは言えなかった。

私は仕方なく、一瞬だけお兄ちゃんを見た。

「ちゃんと」なんて見れない。

だってお兄ちゃんの目が、あまりにも真っすぐに私を見つめているから。

だから見つめ返すなんて、できない。