「話?」
「うん、あのね・・・あたし、好きな人できたの」
「好きな人?」
「うん。それが、その・・・」
「あ、分かった。お兄ちゃんでしょ」
私が訊ねると結衣は少し顔を赤らめて、それから小さく頷いた。
・・・やっぱりな。
結衣の話が深刻なものではなくて安堵する反面、私の中で何かが崩れ落ちてしまいそうになるのを感じた。
結衣が、お兄ちゃんを好きになるなんて。
でも、そのほうがいいような気もしていた。
私とお兄ちゃんは、何があっても結ばれることはない。
それならば、結衣と一緒になったほうが、お兄ちゃんのためなのではないか、と。