商店街を抜けると、家はもうすぐだった。
お兄ちゃんはどうやら既に帰宅しているらしかった。
できるだけ、いつも通りに。
私は自分にそう言い聞かせてはみたものの、どうしてもいつものように元気よく「ただいま」とは言えなかった。
「あ・・・おかえり、カイ」
「ただいま」
お兄ちゃんは、相変わらず平然とした様子だった。
それが私には不思議でならなかった。
意識しているのが私だけのような気がしてきて、たまらなく恥ずかしくなる。
ひょっとすると、さっきまで自分は夢を見ていたのではないかと錯覚しそうになる。
でも、あれは夢なんかじゃなくて。