電話だから相手なんて見えないのに、あたしは首を左右に振った。

それからまた、しばらくの沈黙。

すると不意に、電話の向こうから「誰？」という声が聞こえてきた。

今の声は、きっとカイのお兄さんだ。


最近まで知らなかったけれど、カイのお兄さんは学校でもイケメンで有名な人だった。


「あ・・・ごめん、オレもう帰らなきゃ」


電話の向こうで、佐久間さんはそう言った。


「あ、はい。・・・電話、ありがとうございました」

「うん。じゃあ、カイちゃんに代わるね」

「はい」