「ちょっと声かけてみようよ」

「えっ!?」

「ちょっとだけだから。ね、お願い」

「嫌だってば」


結衣はいつも、かっこいい人を見かけると、声をかけていた。

彼女は顔も可愛いしモテるから、そうやって男の人と気軽に連絡先を交換していた。

曰く、その行為は「イケメン狩り」というのだそうだ。

私は、毎度毎度そのイケメン狩りに付き合って、彼女の引き立て役を担っていた。

ちなみにその任務を放棄したことは、今まで一度もない。

そのせいか、結衣は驚いた様子で私のことをじっと見つめていた。

それから私に、何で、と訊ねてきた。