彼女が家の玄関のドアを開けるとすぐに「ただいま」と叫ぶのは、どうやら彼女の癖らしかった。

おかえり、と言いながら出てきた彼女の兄貴は、オレを見て目を丸くする。

それから、素っ頓狂な声で「佐久間」と言った。

・・・おいおい、何だそのリアクションは。


「佐久間さん、暇してそうだったから。連れてきちゃった」

「ああ・・・うん」

「佐久間さん、上がって。ゆっくりしていってくださいね」

「うん、ありがとう」


オレの返事に、彼女はまたにこーっと笑って見せた。

それから、すたすたと二階へ駆け上がっていった。