嫌だ、なんて言えなかった。

・・・いや、断りたくなかった。

そんなの、断る理由なんて何もない。

でも。

こんなこと、私の独断で決めていいわけもない。

お父さんやお母さんの許可がないと—―

私のそんな考えは、お兄ちゃんにすぐ見透かされてしまった。


「じゃ、日本で待ってて」

「え?」

「一緒に来れないならさ。俺が帰ってくるまで、待ってて」

「・・・うん、分かった」


ちゃんと、待ってるからね。

私は心の中でそう言って、お兄ちゃんに笑いかけた。

そしたらお兄ちゃんは、私の髪を撫でながら「ありがとう」と言ってくれた。


もう、迷いなんていらなかった。