「カイ、どこ行くの?」

「お兄ちゃんのとこっ」


私はお母さんにそう答えると、すぐに家を飛び出した。

空港はそんなに遠くない。

自転車で駅前に着いた時には既に10分が経過していた。

そこから急いで電車に飛び乗り、揺られること20分。

ようやく空港の最寄り駅に着いた。

飛行機が発つまで、あと数分しかなかった。

そんな時間にお兄ちゃんがロビーにいるわけもなく。

私は成す術もなくへなへなとその場にしゃがみ込んでしまった。


「・・・カイ?」


それなのに、お兄ちゃんの声が聞こえたような気がした。

私はその声に、思わず振り返る。