本当は寂しいんだって、行かないでって、どうして言えないんだろう。

引き止められないのなら、笑顔で見送らなきゃだめなのに。

どうして私は、それすらしようとしなかったんだろう。


時計を見る。

今さら、もう遅いかもしれない。

間に合わないかもしれない。

それでも。

何もしないで後悔するのは嫌だって、あの時に思ったんじゃなかったの?


お兄ちゃんが「お兄ちゃん」じゃなくなって。

たったそれだけのことで消えてしまうような、そんな気持ちだったの?

純粋にお兄ちゃんを好きだった私は、どこに行っちゃったの?

あの時の私のほうがよっぽど素直で、よっぽど強かった。