携帯のランプが緑に光るのは、通話着信の時だけだ。
私にとっては珍しいその光景に驚きつつも、通話ボタンを押す。
「もしもし、結衣?」
「ねえカイ、本当に行かなくていいの?」
「いいって。私がそう決めたんだから」
「カイってさ、お兄さんの絵は見たことある?」
「え?急にどうしたの」
「さっきね、お兄さんからあたし宛にスケッチブックが届いたの」
「スケッチブック??」
「うん。そこにはね、絵が描かれてたの」
「どんな?」
「・・・絵の中のカイ、すっごく笑ってるんだよ」
お兄ちゃん・・・。
私はずっと、絵なんて全く興味がなかった。
きっと、これから先もそうなんだと思う。
でも。
誰が描いたとか、どんな絵だとか。
そういうのは全部抜きにして。
自分のことを描いてくれたのなら、素直に嬉しい。
その人の想像した自分は――お兄ちゃんの思う私は、笑ってるんだ。