今日の朝は夏星さんが起こしに来た。
というか、なぜか「晴星ーーーー!!」と半べそで部屋に飛び込んできた。
晴星本人は
「流 またなー!」
と、あっけらかんとした笑顔でのんきに手振って帰ってった。
昨日俺の部屋で寝て、靴を自分家の玄関に置いてくるのを忘れてたらしい。
帰る道はもちろん屋根じゃなく、夏星さんと玄関から。
それから母さんに呼ばれて、テキトーにTシャツとジャージ素材の半ズボンを着て下に下りる。
そのとき ほわんと甘い香りが鼻をくすぐった。
「今日フレンチトースト?!」
バタンとドアを勢いよく開けて駆け寄ると
「正解。早いわね」
振り向いた母さんが、汗マークが浮かんでそうな表情で笑った。
テーブルの用意をし終えた母さんと、
「いただきます」
と2人で手を合わせる。
シナモンの香りがほのかにする母さんのフレンチトーストは
卵がしっかりしみこんで、ほどよい甘さで、厚切りのパンもふかふかで、
美味しすぎる。
無心で食べていつの間にかトーストが無くなったころ。
「流、夜中にゲームのやりすぎはよくないわよ。起きられなくなっちゃうでしょ?」
口に含んだ牛乳を"ゴキュッ"と飲みこんだ。
「う、ん」
ゲームというかRPGというか冒険というかなんというか。
「気をつける。寝る前はだめだってどっかで見た気ーするし」
「分かったならよろしい」
ハムエッグをつつきながら、小さなうそをこっそりつく。
母さんが分かってくれたことにホッとする。