「流ー。そろそろ起きなさーい」

朝の光が眩しい土曜。

休みとはいえ遅くまで寝てるのはダメなわけで、私、空井 光織(うつい ほたる)は息子の流(りゅう)を起こしにいった。



今日の朝ごはんは流の好きなフレンチトーストとハムエッグ。



流の部屋は大きめの天窓があって、朝日が差し込んだら自動的な目覚ましになりそうなのに。

「流?」

ドアを開けると流は案の定ベッドで眠っていた。

ただ
布団をかけてないこと、
パーカーを羽織ってること、
晴星(はるせ)君が隣で寝てることが
昨日と違うところ。



「また晴星君来てたのね」

子供部屋の窓が近いこともあり、よく彼は屋根伝いに流の部屋に遊びに来る。

でも昨日流におやすみを言ったのは8時頃で、そのときにはいなかったような……。


「2人で夜こっそりゲームでもしてたのかしらね」

それなら朝が遅いのもうなずける。
……後で注意かなぁ……。


うーんと考え込むも、

2人は小6になったばかりとはいえ、
あどけない寝顔は赤ちゃんの頃とあまり変わっていない。

可愛いな~……。




ピンポーン!

「わっ、」
思わず声を出してしまうが、2人は気づいてないらしい。

これはそうとうぐっすりね。


起こすの困りそう、と思いながら階段を下りて玄関を開けると、

「ほだるぢゃああんどうじよおお~!」
「ど、どうしたの?かの!」

半泣きでしがみついてきた彼女は、
私の親友で晴星君のお母さんの
一条 夏星(いちじょう かの)。

ふわっとした肩までの髪や、
どんぐり目が幼い印象。

大学生にも間違われやすそうで、
そこが少し羨ましいかな。



「は、晴星が……!」

「晴星君が?」

「晴星の靴がなくて……!どうしよう家出?!まままさか誘拐とか……!!」

「落ち着いてかの、晴星君ならうちで寝てるから!」

肩をつかんで何とかなだめさせた。

早とちりをしちゃうところはまだ直ってないみたい。












……でも、なんで靴がなかったのかしら?