その拍子に、
被っていたフードがパサリと落ちる。
『ちょ、おい?!』
掴まれた手をぶんぶん振ってほどこうとする。
田舎の夜だし、誰も歩いてる人はいない。
なにもこんな全力疾走しなくたってバレないだろ。
『いーじゃねーか!』
振り向きざまに、あいつは笑った。
そのまま駆けていく。
電柱や、田んぼが、
視界の端を通り過ぎていく。
駆けていく。
景色を幾度も追い越していく。
駆ける。
夜の道を。
翔ける。
階段を駆け登る。
転ばないよう気にしながらも。
心臓が、今までにないくらいのペースで動いている。
夜に起きてること。
夜に冒険していること。
非日常の中にいること、
そこに向かうこと。
それらを抱えて翔けるからだろう。
ドクドクと激しいリズムが
胸の奥で鳴り響く。