……コツ。
……コツ、コツ。
……コンコン。
密やかで、でも起こすような気持ちのノックが聴こえる。
ドアからじゃない、上から。
それは別世界に連れてってくれる音だ。
寝たふりの瞼をうっすらと開ける。
斜めになった天井にある、大きな天窓。
目が合うとあいつは嬉しそうに
ニーッと笑った。
後ろには光の粒を散らしたみたいな夜空。
『今、行く』
身振り手振りで合図してから
袋に入れてベッドの側に置いてたスニーカーを持ち、
ベッドの柱に掛けてたパーカーを羽織って、フードを深く被る。
ベッドの上に立ってクレッセント錠を開け
自分の力と、
あいつが伸ばす手に掴まって屋根へ上がる。