十九歳の春。 彼女は突然、僕の前から姿を消した。 いや、現れた、のだろうか。 どちらにせよ、僕の中ではそれらは大差のない事だった。 漆喰で塗り固められた壁に、リノリウムの床。 この無機質な空間の中で、彼女は日々何を思い、過ごしていたのだろう。 今となっては、それを知る術もない。