「千明くん、汗かいてるけど大丈夫?」

千明くんの顔は真っ赤で汗が流れていた。走ってきてくれたのだ‥。

「だ‥大丈夫、大丈夫。よかった、花音に会えて。樹生と結がさ空気読んで見送りに行かなかったんだってさ。」

衝撃の事実だった。

それを聞いて樹生くんのLINEに納得がいった。


「なるほどね‥。気‥つかってくれたんだ。」


2人の優しさが心に染みた。

「‥私も千明くんに会えてよかった。ありがとうね。見送りに来てくれて。」

すると千明くんは笑った。

「当たり前だろ!最初から見送りに行くて決めてたんだから。まぁ‥あの2人が空気、読むとは思わなかったけどな‥。」


空気が和む。2人でこうやって直接、話すのはしばらく出来なくなるかもしれない‥。

そのことに少し、寂しさを覚える。

千明くんはいつも通り、黒縁の眼鏡をしていた。


「ねぇ千明くん。私‥千明くんに渡したいものがあるんだ。」

そう言って私はかばんの中に手を入れた。

「渡したいもの?」

千明くんは私に聞き返してきた。

「うん。私から千明くんに。‥はい。」

私は千明くんに1枚のCDを渡した。

「これは?」

千明くんはそのCDをじっと見ていた。

「私が作曲して作ったピアノ曲。‥千明くんの想いを、全部込めた曲だよ。この曲の‥名前は‥」

涙であとが続かなくなる。

今日は泣かないつもりだった。笑顔で出発するつもりだったのに‥

でも千明くんは、私が言うのを待っていてくれた。


「名前は‥空色プレリュード。意味は‥始まり。この大空から、また新しいことが始まるんだよ。私も、千明くんも。そして、結ちゃんや樹生くんも。」

今日の天気は雲1つない快晴。そこからこの名前が浮かんだ。

この曲は凛子先生に手伝ってもらって作った。



見ると‥千明くんも泣いていた。

「あ‥‥ありがとう。‥このCD、大事にするから。絶対に大事にするから‥。」

「うん!ありがとう。」

すると、それまであんまりなかった不安が急に襲ってきた。

手が震えてくる‥。



な‥なんで‥今なの?

震えているところなんて千明くんに見られたくない。

なのに‥